ペロニー病の治療法についてお聞きしますが、現在どのような治療が行われているのでしょうか、また、行われるべきでしょうか。
ペロニー病に関する最大の問題点は、そもそも正確な原因がわかっていないということです。ですから、治療を適切に行うことは困難です。その他の問題点として、ペロニー病にはいくつかの段階があるということがあげられます。初期段階では、プラーク(瘢痕組織)が形成され、臨床状態に変化をもたらしますが、ペロニー病の15%は自然寛解することが知られています。正常な性交を妨げるような陰茎の屈曲は、時間の経過とともに変化します。したがって、初期段階において外科的治療を施行することは、施行の時期によっては病状を改善させることも悪化させることもあるため不可能です。結果として、しばらくの間、待機療法が選択されることになります。待機期間中には、数多くの臨床的かつ経験的な治療が行われます。すでにいくつかの薬剤が検討されており、今日、もっとも適切な治療はコルヒチンまたはビタミンEであると私は考えています。
原因が明らかでない疾患については、根治を目的とした治療法を検討することができない、ということが大きな問題ですね。初期段階だけに注目すると、かなりの割合の患者さんが自然治癒するとのことですが、このような患者さんの割合を増加させる方法はありますか。あるいは、待機療法により経過を観察することしかできないのでしょうか。
患者さんをただ待機させておくわけにはいきません。一度寛解を経験した患者さんは、陰茎に結節が生じ、屈曲が進行しつつあることに気づくようになります。何もせずに経過を観察することは、患者さんを非常に不安にさせます。私はいつも「忍耐が必要です」と話しています。この時期を切り抜けるには、いくつかの薬剤の使用を試みる必要があります。ある研究から、薬剤を用いることにより 屈曲が改善される可能性が示されており、このような研究は、自然にあるいは治療の結果として改善を示す患者さんの数を増加させることになります。ここで重要なのは、私自身はペロニー病に対して手術を行うことは少ないということです。30%未満の患者さんにしか手術は行っていません。これは、手術を行わなくても 改善がみられた、あるいは最終的には屈曲に慣れて、正常な性生活が続けられるようになる患者さんがいる、ということを意味しています。私が手術を行うのは、屈曲が重篤で、1年半か2年後には正常な性生活が困難となる27%の患者さんに対してのみです。
外科手術には合併症と死亡のリスクが伴うのではないでしょうか。機能の回復についてはいかがですか。
ペロニー病に対する手術は非常に小規模なもので、死亡リスクはありません。しかし、合併症に関しては、基本的に2種類のリスクがあります。ペロニー病に対する手術には2つの方法があり、陰茎の屈曲とプラークが認められる場合には、屈曲の方向と反対側(counter-lateral)の白膜縫縮術または白膜片切除(Nesbit法またはplication法)を行います。これらの手法には陰茎サイズが小さくなるという問題があり、患者さんはこの点に大きな不安を抱いていますが、陰茎サイズが減少するということ以外は、合併症発生率の低い手法です。もう1つの手法は、プラーク切除後に、欠損部にグラフト移植を行うというものです。グラフトに用いられるものは、静脈、ウシ心膜、陰茎海綿体の非露出部分(hidden part)の白膜などさまざまです。今日ではさらに、ブタの腸粘膜下膜も用いられています。この手法では、勃起障害が約15%に発生し、陰茎サイズの減少が、約10%あるいは7%に発生します。
次に、ペロニー病の今後についてうかがいます。病因をさらに解明し、より良い治療を提供するための十分な研究は行われているのですか。
いくつかの試験が行われていますが、この分野に関して十分な研究がなされているとはいえません。ペロニー病は良性疾患ですが、50歳を超える男性の4%に発生しますので、罹患率の高い疾患といえます。ペロニー病の病態生理をより深く理解すべく、現在数多くの試験が開始されています。しかしながら、病態生理を理解するのに有用な結果が得られるまでには、もう少し時間がかかるでしょう。
約10年後には、驚くべき効果を発揮する薬剤が開発されていると思われますか。
いいえ、そのようなことはないと思います。薬剤についてはいくつかの研究が行われており、たとえば、私はプラークへのコルヒチン注入に関する研究を行っていますが、病態生理の解明という点では、まだごく初期の段階であると考えています。
多能性幹細胞を用いた治療を検討するという選択肢もあるのでしょうか。
ペロニー病の正確な原因はわかっていません。そのような状況で、 疾患と白膜における瘢痕形成との関連を明らかにできるでしょうか。おわかりのように、治療法を見極めることは困難なのです。すべての事柄に関して疑問と答えの両方が見出されるでしょうが、将来それらは治療法の検討に役立つでしょう。
ストックホルムで開催された本年度の欧州泌尿器科学会(EAU)年次総会では、ペロニー病に関連する新情報の報告はありましたか。
いいえ、新しい情報はまったくありませんでした。ペロニー病に関する研究の報告はごくわずかでした。
ペロニー病研究の第一歩は何であるとお考えですか。
ともかくこの疾患の病態生理を理解すること、すなわち、なぜプラークが突然形成されるのかを理解することが重要だと思います。なかには、原因が明確な患者さんもたくさんいます。たとえば、勃起を誘発するための注入薬の使用あるいは陰茎折症によりペロニー病を発症した患者さんなどです。しかし、このような原因がないのに、プラークが形成される患者さんもいます。さらに、この疾患は、1つの部位に限局するものではなく、また陰茎サイズの減少が引き起こされる傾向もあります。このような現象がなぜ起こるのか、そして正常組織が突然に瘢痕化する原因は何であるのかを研究することが重要だと思います。このような点を私は解明したいのですが、これまでのところ、そうした方向での研究はそれほど多くは行われていません。
ブラジルでは、ペロニー病患者さんに対し、大都市と農村地域との差を考慮したうえで適切なケアが提供されていると思われますか。
われわれがブラジル南部のPorto Alegreで実施した試験において、50歳を超える男性の4%がペロニー病を有していることが示されました。4%というのは、かなり大きな数字です。通常、患者さんは陰茎に屈曲や結節形成といった何らかの現象が起こっていることに気づくと、早期に受診します。農村地域の患者さんでも、陰茎に腫瘍が発生しているのではないかと考え、不安になって受診します。多くの男性が助けを求めていることは間違いありません。私は毎週のように、新たなペロニー病患者さんを診察しています。
医療という観点からは、ペロニー病は十分に管理された状況にあるとお考えですか。
ブラジルでは、常に医療が不十分な状況です。患者さんの数は、医療従事者よりも多いと思いますが、患者さんが最終的に泌尿器科を受診した場合は、適切な医療を受けることができるでしょう。泌尿器科医の診察を受けていない患者さんがどの程度いるのかはわかっていません。ブラジルは、公衆衛生面で深刻な問題をかかえており、すべてのペロニー病患者さんが治療を受けられるかどうかもわかりません。泌尿器科を受診すれば、治療を受けることはできますが、一般にどの程度の需要があるのか把握できていません。
泌尿器科医およびプライマリケア医がペロニー病患者さんを診察する場合、一般的にどのような対応を推奨されますか。
一般医家が陰茎の屈曲について患者さんに尋ねることはきわめてまれだと思いますが、患者さんが屈曲を訴えた場合は、泌尿器科医へ紹介することになるでしょう。
また、多くの実施可能な治療法があります。まず、屈曲を長期間にわたって矯正するという観点から、手術による陰茎機能の回復という選択肢があります。世界的に最適な治療法 ではありませんが、大部分の患者さんのアウトカムは良好です。
泌尿器科医には、配慮が求められます。患者さんが陰茎の結節あるいはペロニー病を訴えた場合、泌尿器科医が最初に行うべきことは、患者さんを安心させることです。これは癌ではなく、疾患自体が性交不能症を引き起こすことはないということを説明します。また、陰茎の機能メカニズムを変化させるものではなく、屈曲が生じるだけであることも伝えます。さらに、長期的な治療を実施することができ、2年後には屈曲矯正のための手術を行う可能性があることも説明します。臨床的治療の選択肢は少ないですが、私は常に患者さんに対して、ペロニー病の至適治療は忍耐であるとお話ししています。患者さんは、待つことを覚悟しなければなりません。積極的に治療しても無駄であり、ある時点まで待つことが必要です。多くの患者さんが最終的には陰茎が屈曲した状態に慣れ、性生活を再開しています。しかし、患者さんに「時間がたてば、いずれ慣れますよ 」と伝えるだけでは不十分です。患者さんは非常に不安な気持ちになりやすいので、以上のような説明に加えて、可能であれば治療を行うことが必要です。待機期間中は、ビタミンEを服用してもらえばよいでしょう。
その点については、患者さんに対する心理的なサポートが有用でしょうね。
その通りです。患者さんに対しては、これは癌ではなく、性交不能症を引き起こすことのない良性の疾患であり、性交の継続も可能であるということを説明しなくてはなりません。性交を恐れるようになる患者さんはたくさんいますので、しばらくの間、泌尿器科医がカウンセラーのように接することも、たいへん有用です。
そのほかに、私たちが知っておくべきことはありますか。
ペロニー病は、製薬業界の投資という観点からも、もう少し注目すべき疾患であると思います。なぜなら、4%という罹患率は、治療のために薬剤を服用することになる患者さんが多数存在することを示唆しているからです。しかし薬剤研究に関しては、その将来は不透明です。
罹患率は低いですが、ペロニー病は患者さんに大きな心的外傷を与える疾患ですね。
そうですね。かなり以前にロサンゼルスのカリフォルニア大学で実施されたペロニー病の自然史に関する試験において、患者さんの15%で寛解が得られることが明らかにされました。この試験によると、15%が寛解し、47%が悪化し、残りの患者さんでは病状の変化はありませんでした。変化のみられなかった患者さんの80%は、プラーク、陰茎の屈曲、性交障害によって深刻な心理的障害をきたし、それらに対する不安から、生活に影響が及ぼされていました。
そういったことからも、罹患率が低いとはいえ、質の高い専門的なケアおよび治療が必要であることは確かですね。
4%は取るに足らない数値ではありません。50歳を超える男性の4%が罹患しているわけですから、患者さんは多数存在していることになり、ペロニー病は注目に値する疾患といえます。